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Channel: 宮部 龍彦 - 示現舎
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横須賀市同和住宅「武ハイムA棟」一般化の裏側

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国の同和事業が行われていた時代、全国各地にいわゆる同和住宅と呼ばれる公営住宅が建設された。同和住宅が一般の公営住宅と異なるのは、入居者が「同和関係者」に限定されていることだ。しかし、同和事業が終わってからは、各地の同和住宅では「同和関係者」という入居要件が外され、一般開放された。現在では、ほとんど全ての同和住宅が一般開放され、普通の公営住宅と同じ扱いになっている。

その中でも、最後まで一般開放を拒んできた同和住宅の1つが、横須賀市たけにある「武ハイムA棟」、いわゆる「同和棟」である。詳しくは「月刊「同和と在日」2011年1月号 の記事」をご覧いただきたい。

その同和棟のことについて、すっかり忘れかけていた時、全国部落調査の裁判でその話題に触れたところ、原告の1人である片岡明幸氏の書面に思わぬことが書かれていた。

横須賀市は同和地区住民の住宅対策として市営住宅「武ハイム3棟75室」のうちの1棟25室を同和向け住宅と位置づけ、運動団体の推薦を受けた住民が入居していた。しかし、近年同和地区の入居希望者が少なくなって来たために、今後の入居については一般募集でおこなうことにした。

筆者はその武ハイムの現在の状況を確認すべく、現地を訪れた。

こちらが武ハイムA棟である。武ハイムは3棟からなるが、そのうち一番入り口に近い側の棟である。

ここはA棟の集会所。

実は、この集会所には解放同盟横須賀支部の人権生活相談所の看板が掲げられていたのだが、今はなくなっている。

事情を知る人物によると、武ハイムが一般化されたのは2016年の4月のこと。横須賀市が、A棟の自治会に対して、従来は解放同盟と全日本同和会を通じて行っていた入居者の募集を、市による一般公募に切り替えることを通知した。

しかし、武ハイムA棟は実質的には解放同盟員と全日本同和会員だけが入居者で、そこに一般の住民を入居させることはトラブルが予想されること等の理由で、住民は一般化を拒み、市も二の足を踏んできた。一般化にあたって問題はなかったのか。先の事情通はこう語る。

「別に何もなくて新しい住民とも仲良くやってますよ」

解放同盟と同和会を通じて入居者を集めることができなくなりつつあったのは事実で、一般化前は5つが空き部屋になっていたという。当然、一般化により空き部屋はすぐに埋まった。

運動体側の反発があったのかというと、そのようなことはなく、同和事業を行っていた自治体で同和住宅がほとんど一般化され、武ハイムA棟はその中でも最後の最後まで同和住宅のままだったという状況は認識しており、時代の流れということで運動体は受け入れたという。解放同盟の相談所となっていた集会所からも、解放同盟は完全に引き払った。文字通り全てが一般開放された状態だ。

ただし、3棟のうちA棟だけ住民の自治会が分かれている状態はまだ続いているという。これは同和問題でわだかまりがあるというわけではなく、住民も行政側も自治会を統合する必要性は認識しており、自治会がもつ財産の処理など、事務的な手続きに時間がかかっているためだという。

筆者が取材した6年前は、様々なトラブルを心配して市も住民も一般化に二の足を踏む状況が見られたが、案外一般はすんなりと行われたようである。やはり「案ずるより産むが易し」ということだろう。

はてさて、「差別」を恐れて問題解決を遅らせたのは、誰だったのだろうか。


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