※画像はネットの電話帳の1日のアクセス数の推移。
ネットで電話帳を検索できるサイトとして、知る人ぞ知る「ネットの電話帳」。2015年8月14日、そこに掲載されている電話帳掲載情報の削除を求めて京都地裁で提訴されていたのだが、2年近くたった先日の4月25日、ようやく判決が下された。
結果は様々な新聞が報じている通り、ネットの電話帳に対して情報の削除と賠償金の支払いを命じる内容である。
ただ、この裁判は複雑で、ネットの電話帳側が原告の実名入りの訴訟記録をネットで公開したことについても、途中で追加で削除と賠償金の支払いが求められた。そして、訴訟記録の件については、原告の住所と電話番号を伏せればネットで公開してもよいという判決である。
つまり、ネットの電話帳の完全敗訴というわけでもないのだが、どちらかというと裁判の本題は電話帳掲載情報の方なので、敗訴は敗訴である。
判決内容を要約すると、ネットの電話帳が原告の氏名・住所・電話番号の掲載を止めて以降別サイトに掲載することもしないこと、5万円の慰謝料と5000円の弁護士費用を支払えということだ。訴訟記録については、氏名はそのままでよいが、住所・電話番号は伏せて、なおかつ今まで掲載したことについてさきほどと同額の賠償金を支払えということである。
ご承知の通り、全国の図書館等で普通に見られる電話帳について、なぜネット公開がだめなのかというと、書籍のハローページとは違って、ネットだと容易にコピーされてしまうからだめということである。また、不法行為であるとした根拠となる法律は、著作権法や個人情報保護法ではなく、民法709条ということである。そして、不法行為とは「人格権の侵害」なのだが、この人格権の具体的な内容は「生活の本拠における平穏」ということで、たとえネットの電話帳が災害時に有用であっても生活の平穏が優先されるということである。
一方、訴訟記録については「裁判の公開は、司法に対する民主的な監視を実現するため、絶対的に保障されるべきもの」で、原告の氏名程度であれば当然公開されるべきものとして削除は求められなかった。
当然、「ネットの電話帳」としては控訴する予定である。
ご承知の通り今から10年ほど前に「グーグルストリートビュー」が始められた時も、同じような主張がされ、グーグルが各地の地方議会や弁護士会からサービースの中止を求められたが、今はすっかりサービスが定着している状態である。「グーグルストリートビュー」は無断で家の外観や表札を撮影し、時にSNSの写真から個人宅の場所を特定するツールとなっているとこが、「生活の本拠における平穏」を侵害するものとしてことさら非難される状況にはない。
ここで屈してしまっては、日本のIT事業者がナメられてしまい、また海外勢のやりたい放題になってしまうだろう。