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Channel: 宮部 龍彦 - 示現舎
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NHK受信料は合憲、最高裁判決で「NHKから国民を守る党」は存在感を増す?

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去る12月6日、最高裁でNHK受信料の徴収は合憲とした判決が出されたのは多くの人が知るところ。その影で、徐々に存在感を増している党がある。それが「NHKから国民を守る党」である。

いかにも泡沫政党という雰囲気が漂うが、驚くなかれ、国政こそ進出していないものの、現在4名の地方議員が所属し、活動中だ。

件の最高裁判決の翌日、町田バスセンター近くで活動している「NHKから国民を守る党」を直撃した。来年の2月25日に町田市議会議員選挙があり、それを見据えての活動である。

「最高裁判決は影響ないですよ、むしろあれで関心が高まってますね」

同党町田支部代表の深沢ひろふみ氏はビラを配りながらそう語る。

「なぜ町田なんですか?」と問うと

「町田は、NHKの集金人への反発が多いんですよ。通ってる人の話を聞いていれば分かります」

という。

確かに、受信料の支払い拒否を呼びかける黄色いビラを受け取る人は多い。町田バスセンターよりもはるかに人通りが多い、小田急町田駅とJR町田駅を結ぶ陸橋では、手が追いつかないくらいにビラがはけるという。ただ、あそこは町田市民でない人が多いのが難点だ。

特に高齢者を中心に、足を止めて話を聞いている人もかなりいる。中には「受信料払わないとだめだろ」と怒り出す人もいるというが、賛否以前にNHKの受信料徴収制度に純粋に疑問を持って足を止める人が多い。

「もう、最高裁で負けちゃったからだめなんじゃないの?」

やはり、判決の影響があってそう問う人も多かったがその度に

「いえいえ、変わらないですよ。あれは民事の問題で、支払わなくても罰則がないことは変わらないですから」

最高裁の判決は、NHKを見ているにも関わらず払わなかったことが問題とされたのであって、NHKを見ていなければまた問題は別というのが同党の論理だ。そして、いずれにしてもテレビを持っているかどうか証明するのはNHK側の責任なので、テレビがないと言えばNHKは何もできないことには変わりがないという。

「あの最高裁の裁判にも関わっていたんですか?」

そう問うと、党のメンバーは「あれには関わっていないし、よく分からない」と口を揃えた。あれはNHKは反日とか言っている右寄りの人がやった裁判で、「NHKから国民を守る党」とはそのようなイデオロギーとは無縁であるという。

「我々の主張は、とにかく受信料の強制徴収を止めさせる、それ以外にない」

深沢氏はそう語る。また埼玉県朝霞市議会議員の大橋昌信氏は、

「反日とか以前に、NHK見てないですから。放送の内容には興味ないです」

という。

ビラ配りをしている4人のいずれに聞いても、イデオロギーかかった部分は全くなかった。

では、受信料の強制徴収を止めたあとのNHKはどうなるのか、それについては民営化すればよいという意見もあれば、それはNHKがやりたいようにすればいいので我々が考えることではないという意見もあれば、国会で合意が得られるなら税金で運営すればいいという意見すらあった。本当に「NHK受信料の強制徴収を止めさせる」それ以外には何もない、究極のワンイシュー政党なのである。

そのようなワンイシュー政党の候補者が地方議会とはいえ当選することができるのは、潜在的な支持者が意外に多いからだ。NHKの受信料の支払いを滞納している世帯は200万世帯程度と言われるが、そもそも契約をしていない世帯は1000万世帯を超えると言われる。そう考えると、単純に世帯数で言えば、公明党の支持母体である創価学会の約800万世帯を軽く超えてしまうのだ。

最高裁判決をバックにNHKが受信料の徴収を強化すれば、同党にとってはダメージになるどころか、集金人への反発からむしろ支持が増えるというわけだ。

さて、そうやって当選した同党の地方議員はどのような活動をしているのか。埼玉県志木市議会議員である多田光宏氏は市政報告のビラを取り出した。その中身は、障害者は高齢者向けに選挙公報の音声版を提供するべきというものや、市役所の法律相談を土日も行ってほしい、市役所の手数料を電子マネーで支払うようにできないかといった、意外に普通のものだった。

「集金人を規制する条例を出したいけど、出しても通らないでしょ。1人だけだから」

その辺りは、多田氏は非常に現実的だ。


深沢氏も、もし町田市議会議員になれたとして、現実問題としてNHKのことばかりやるわけにはいかず、普通の地方議員としての活動をすることになるだろうという。

一方、対象的なのは大橋氏だ。議会ではNHKや集金人関連の質問しかしておらず、市民の請願もNHKに関わるものでなければ一切受け付けていないという。もっとも、NHKがらみの請願が市民から出されたことはない。

また、大橋氏はワンセグ機能付き携帯電話ではNHKの受信契約を締結する義務はないことを確認するためにNHKを提訴し、昨年さいたま地裁でNHKに勝訴した裁判の原告でもある。この裁判も、NHKをめぐる裁判でも非常に重要なものだ。その後NHKが東京高裁に控訴し、今のところ裁判の日程は未定なのだという。

12月6日の最高裁判決を巡っては、判決を出した寺田逸郎裁判長が最高裁判所裁判官の国民審査の対象にならず、まもなく定年退官であることも話題となっている。

NHKを解体すべきという意見までは多くないにしても、現在の受信料徴収制度が時代遅れになりつつあり、過去にも様々な問題を惹き起しており、制度の見直しを迫られているのは事実。国政においてはNHK受信料の問題に真正面から斬り込む政党や候補者もいない中、不満の受け皿として「NHKから国民を守る党」は一定の存在感を持ち続けるだろう。


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