11月7日、富岡八幡宮の富岡長子宮司らが、日本刀などを持った宮司の弟夫婦に追い掛け回されて殺傷され、その後宮司の弟夫婦が自殺した事件。その異様さや、事件の背景は既に様々なメディアが連日のように報じているところである。
ただ、宮司の弟である富岡茂永容疑者の遺書と考えられる手紙の全文はテレビ・新聞等は概要のみを報じている一方、手紙の全文はツイッターで公開され、ネットの方が先行している面がある。
さらに、その手紙の中でもネット以外のメディアが不自然に避けている部分がある。それが、次の部分である。
長子や聰子らが、私と妻を辞めさせて追い出したかった理由がもう一つあります、それは、私の妻真里子の車いすに乗った障害者の兄の問題です。私が真里子の事を姉や母に話すと、姉や母は、密かに、真里子の身辺調査をした挙句、障害者の兄を見てきて、「あんなバケモノのような兄弟がいる家の娘を貰える訳がないでしょう!死んでも親戚になんかならないから、諦めて、それに、あそこの家は部落民なのよ!」と、部落民でもない妻の実家を部落民扱いし、余りにも酷い差別用語を並べ立てたのです。私の母聰子の兄は精神異常者で、男系男子81代続いた海部家も、聰子の兄が精神異常者だったため、現在は聰子の妹の婿養子が82代を継いでいますが、聰子の家族は、精神異常の長男を生涯精神病院に閉じ込め、社会に極秘にしたのです。そして興永も実際には富岡家の次男で、長男の國臣氏は精神異常で、富岡八幡宮の境内にある家で、ガス自殺をしています。そのような家系の両親が、障害者に対する悼ましいまでの偏見を持っていたことに大変驚きました。
これが事実であれば、本当にどうしようもない話である。要は精神異常の家系の人間が、部落差別をし、しかも相手は部落民でもなかったということなのである。「部落」がからむ話はメディアが避けたがることはもちろんのこと、どのように向き合うかは人それぞれとして、遺伝要因などで精神病を発症しやすい家系があるということも事実なだけに、これもあまりメディアは触れたくないだろう。
さて、「落民でもない妻の実家を部落民扱い」したことについては、この事にからんで富岡真里子容疑者が富岡茂永容疑者の家族に損害賠償請求を求める訴訟を提起したことが『月刊・部落解放』2003年5月号に掲載されている。
『月刊・部落解放』に書かれた事のあらましは次のとおりだ。
これが事実であれば、富岡真里子容疑者が富岡茂永容疑者の家族を強く恨むようになり、夫とともに富岡長子宮司殺害を行ったきっかけは、富岡聰子氏の部落差別発言ということになるだろう。
しかし、不可解な点がいくつもある。そもそも、富岡真里子容疑者が富岡茂永容疑者と結婚する経緯はいわゆる略奪婚であり、部落が絡まなくても、大いに揉める要素があった。また、富岡茂永容疑者が録音したテープを焼却した理由も不自然である。『月刊・部落解放』には富岡真里子容疑者がテープから起こしたとされる発言の内容が詳細に掲載されているが、テープをそのまま起こしたというよりは、会話のあらましから推敲して作り上げたような文章である。
部落差別発言が事実としても、部落差別というよりは、結婚を阻止する理由付けとして適当に持ち出した話のように見える。事実、富岡真里子容疑者は部落とは無関係で、富岡茂永容疑者の家族の富岡真里子容疑者は部落出身との主張はいい加減なものであることが明らかだ。
そして、なぜこのような話に部落解放同盟東京都連が乗ったのかということだ。テープが焼却された以上、発言を証明するものがないので裁判は水掛け論になることが必至であるし、発言が事実であっても結果的に、富岡真里子容疑者と富岡茂永容疑者は結婚しているので、いったい何が損害なのかということになってしまうだろう。もっとも、部落解放同盟東京都連がその程度のレベルだけなのかも知れないが。
なお、この裁判については解放新聞等でも続報がなく、「さまざまな事情により」取り下げられた。