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Channel: 宮部 龍彦 - 示現舎
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全国部落調査事件第2回口頭弁論が行われました

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9月26日10時に東京地裁103号法廷で全国部落調査事件が行われました。今回も傍聴は抽選となり、倍率は1.2~1.3倍だったようです。

なお、10:00にかもめの広場に来ると告知していましたが、地下鉄千代田線で信号トラブル及び病人が発生して大幅に遅れてしまいまして、何人かとすれ違いになってしまったようです。申し訳ありませんでした。

例によって双方の書面の陳述が行われるのですが、解放同盟側は15分ほど概要について説明していました。おそらく事前に練習していたのか、弁護士は感情を込めて陳述していました。

裁判官に、被告側も概要を説明したいと申し出たのですが、一度陳述が終わった後はそれはできないので、要は先に言えということでした。すったもんだした挙句、次回は双方が10分ずつ概要を説明することになりました。

裁判というのはいくつか暗黙のルールがあり、裁判所や担当の裁判官によって微妙に違いがあります。今回の裁判官は、見かけによらず、ややマッチョな感じでした。

今回の裁判は当事者は全国部落調査に関することを全面に出していますが、裁判官の関心はそれよりも「解放同盟関係人物一覧」になるようで、解放同盟側は人物一覧に掲載されていない人物も原告に加わっていることについて説明するように求められました。

後でとある記者から「ああいうことになるし、弁護士を付けないのですか?」と聞かれましたが、示現舎は自主自立なので、今後も不屈不滅の精神で本人訴訟で行います。

双方の書面は次の通りです。

被告-準備書面-H28-8-3.pdf
証拠説明書-H28-8-3.pdf

原告-準備書面-H28-9-26.pdf
証拠説明書-H28-9-26.pdf

双方の主張の概要を簡単にまとめると、次の通りです。

被告:原告らが「被差別出身者」であるとは、法律的にも社会的にも学術的にも認められない。

原告:そうだとしても、被差別部落出身者は存在するし、中傷をすれば人格権侵害は成立する。

被告:全國部落調査は昭和11年3月に財団法人中央融和事業協会が作成したもので、原告とは関係がない。

原告:人格権侵害あるいは不法行為を理由とする請求なので、財団法人中央融和事業協会と関係あるかどうかは問題ではない。

原告らのうち13名は部落解放同盟関係人物一覧に掲載されていないが、自分や近親者の現住所や過去の住所が部落所在地として掲載されているので人格権侵害を受けている。

被告:全國部落調査は誰でも内容を知る可能性があったもので、それがいまさら公になっただけであり、さらに目録にある書籍は存在していないので、訴えの利益がない。

原告:将来に渡るネットでの公開や出版を禁ずるもので、訴えの利益がある。目録にある書籍は存在し、被告の主張は虚偽である。

被告:同和地区Wikiは現在は被告が管理運営しておらず、ドメインを管理していただけである。「解放同盟関係人物一覧」なるものが、どうやって作成されたのか被告らは関知しないところである。

原告:被告の主張は虚偽で、同和地区Wikiの記事を削除する権限を有していたと自白していたし、同和地区Wikiを開設したと宣伝していた。「解放同盟関係人物一覧」の記事は横浜地裁相模原支部の仮処分の後に削除された。

被告:早稲田大学名簿提出事件は、「江沢民国家主席の講演会に参加を申し込んだ学生」という情報を大学が警察に提出したことが違法とされた。また、NTT電話帳事件では、NTTと契約関係にある顧客が、電話帳への掲載を明示的に断ったにも関わらず掲載したことを違法とした。本件とは異なる。

被告:そもそも原告解放同盟は自ら「部落住民・部落出身者で構成する自主的大衆団体」と主張をしており、なおかつ自ら差別される人々だといった趣旨の主張をしている。

被告:解放同盟は会員が役職と本名を明かして政治的な活動を行っている実態がある。原告らの主張が「解放同盟は部落解放運動団体だから、他の政治的団体に比べて特別な配慮を必要とする」といった趣旨であれば、それこそ部落問題を特別視することである。

被告:宇都宮地裁栃木支部昭和33年2月28日判決を引き合いに出し、部落の住民と精神病者を同列視するような、双方に差別的な原告の主張こそ危険な考えである。

被告:私人間に「憲法の規定が直接に適用されるということはない」(いわゆる三菱樹脂事件判決(民集27巻11号1536頁)を念頭に置いたものである)と言いながら、私人による出版行為を憲法の趣旨に従って禁止せよという主張は矛盾している。

被告:全國部落調査には、記載された部落が「被差別部落」とは書かれておらず、戸数が少なく集落ですらないものもある。しかし、全國部落調査は「部落地名総鑑」の原点が政府の外郭団体によって融和事業の推進のために作られた文書だった事実を示し、また様々な部落問題研究の基本文献であって学術的価値が高い。

被告:東京法務局長が原告に部落リストの削除などを求めた行為は「説示」であって「行政指導」ではない。さらに行政手続法32条には、行政指導の内容は「相手方の任意の協力によってのみ実現される」ものであり「相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない」とある。

被告:最高裁が滋賀県の「同和地区地域総合センター要覧」を非公開にしたのは、事務事業支障情報という理由であって、個人情報であるとの判断はしていない。

被告:原告解放同盟に政治的な意味で都合が悪いから今回の件への対応を迫られているに過ぎず、原告解放同盟の業務を妨害しているとは言えない。これが業務妨害なら、誰かにとって都合の悪い言論は業務妨害ということになり、国民の言論活動が成り立たなくなる。

被告:同和地区の地名は、行政や原告の関係団体によって過去に何度も出版物で公開されている。
特に鳥取県、大阪府、京都府、長野県、和歌山県、徳島県、高知県、奈良県、群馬県、滋賀県は府県単位の部落名リストが図書館等にあり、京都府、和歌山県は全國部落調査の内容そのものである。

原告:全国の部落名リストではないし、出版部数が限られているか、学術目的に利用が限定されているか、図書館にあっても一般人が容易に見つけられるものではない。

被告によるものは、全国を網羅し、コンパクトで読みやすくし、もとが手書きのものを活字化し、現在の地名を掲載し、調査。研究に限定されていないので、だめ。

被告:同和事業で作られた隣保館等の施設が同和地区の目印になっており、全国隣保館連絡協議会・厚生労働省は隣保館が同和地対策として設置されたものであると認めている。それらのことは原告も認識している。

原告:隣保館は必ずしも同和対策のためではなく、アイヌ対策の生活館もある。隣保館は同和地区の目印ではなく地域に開かれた施設である。しかし、被告らのように差別的意図をもって、これらを「目印」とするような人がいることも否定できない。そこで、それらの情報の扱いには慎重さが必要。

被告:解放同盟の綱領の解説には「部落解放が実現された状態とは、部落民であることを明らかにしたり、歴史的に部落差別を受けた地域が存在していても、何らの差別的取り扱いや排除・忌避を受けることなく人間としての尊厳と権利を享受し、支障なく自己実現ができる社会環境になることである」とある。これによれば、部落問題解決のために部落の場所を隠すことを要件としていない。

原告:現実の社会が「部落解放が実現された状態」でなはいので、部落の場所を公開してはいけない。現に戸籍の不正取得などがある。部落の場所を明らかにするという前提で部落解放運動が行われてきたというのは、綱領の誤読である。

被告:原告らはプライバシーを口実に、部落問題に関する言論全体を支配しようとしているものである。

原告:本件訴訟は、「部落の地名をどのように扱うかについて」の議論に関するものではかく、部落の地名の公表等により実際に権利侵害を受けた原告らが被害の救済をはかるためのものである。

被告:原告らは「被差別部落出身者」なる身分を裁判所に認めさせようとしている。

原告:勝手な思い込みに過ぎない。原告らは、社会的実体として「被差別部落」が存在することを前提に、被告の行為が「被差別部落」出身者を含む原告らに対する棺利侵害にあたることを主張しているだけである。

被告:部落問題は、おそらく多くの人にとっては理解不可能な問題であって、その起源も学術的に解明されていない。何をもって「部落」と言えるのかも定義がない。

原告:定義がなくても差別はある。「黒人」の定義が定まらなくても黒人差別は成立するし、障害者の定義が法的に定まっていない段階でも障害者を侮蔑する発言を行えば障害者差別であり、いずれも人格権侵害等が成立しうる。

解放同盟は「被差別部落とは、身分・職業・居住が固定された前近代に穣多・非人などと呼称されたあらゆる被差別民の居住集落に歴史的根拠と関連を持つ現在の被差別地域である」と定義している。

被告:「部落民」の定義がない。同和対策事業においても、血統を基準にするのか住所を基準とするのかその両方を基準とするのか、地域によりまちまちであった。出身地という概念自体も曖昧なものである。

原告:定義がなくても差別はある。

解放同盟は「歴史的・社会的に形成された被差別部落に現在居住しているかあるいは過去に居住していたという事実などによって、部落差別を受ける可能‘性を持つ人の総称」としている。

被告:「部落差別」の定義がない。解放同盟は「日常、部落に生起する問題で、部落にとって、部落民にとって不利益な問題はいっさい差別である」としているので、何でも差別と言えるのではないか。

原告:定義がなくても差別はある。被差別部落出身者であることを理由に不利益な取り扱いをすればそれは部落差別である

被告:「差別されない権利」は全ての国民に等しくあるものである。今でも「部落差別」が残っているとすれば、原告らも差別を温存した「共犯」である。「差別されない権利」があるなら、なおのこと被告らは次世代に問題を先送りしないため、前世代の間違った因襲を破壊しなければならない。

原告:「差別されない権利」は全ての国民に等しくあるものである点は認める。

被告:原告解放同盟は「被差別部落民」の代表ではない。

原告:「原告解放同盟は『被差別部落民』の代表」だという主張はしていない。

被告:全國部落調査に掲載されているから差別対象ではない。例えば「嫌悪すべき歴史的背景に起因する心理的欠陥」のある不動産物件は宅建業法47条により告知する義務があるが、国土交通省は同和地区に物件があることを回答しなくても宅建業法47条には抵触しないとしている、

原告:国土交通省の説明の趣旨は部落差別を助長しないためであって、心理的欠陥とは関係ない。

被告:解放新聞が掲示してあることで部落だと分かる部落もあるし、見た目からして異様な部落があるし、保育所の保護者会が天皇制や戸籍制度に反対する活動をしている部落がある。そのような実態が部落の偏見を広めている。部落の場所を特定しなければ、個別の部落が抱える問題は解決できない。

原告:「部落の場所を特定しなければ、個別の部落が抱える問題は解決できない」ことはあり得るが、部落地名をネットで拡散させることとは別次元である。

被告:全國部落調査は米国のネット図書館等に拡散しており、出版禁止はもはや無意味である。

原告:それでも意味がある。

被告:全國部落調査のデータは、解放同盟の綱領の解説でも援用され、様々な学術論文から引用されており、学術的価値がある。

原告:部落問題の研究者は当事者の悲痛な思いに向き合っているが、被告は被差別部落を訪れ、写真を撮影し、それをインターネット上に晒すことを推奨しているようで、学問目的とは考えられない。全國部落調査自体、被差別部落名等を羅列した中央融和事業協会の内部文書に過ぎず学術的価値はない。

被告:滋賀県甲賀市では「ニンジャファインダーズ」と称して忍者の子孫を探したように、「部落ファインダーズ」を結成するべきである。

原告:忍者と被差別部落の同一性ないし類似性が明らかではない。

被告:同和地区Wikiはプロバイダ責任限定法の特定電気通信設備に該当するため、直ちに管理者が責任を負うものではない。また、掲載された記事は原告を含め誰でも編集可能だった。

原告:被告宮部は同和地区Wikiで自ら情報を発信し、内容を熟知していたので免責されない。

次回期日は2ヶ月ほど先で、12月に入ってからとなります。

次回口頭弁論期日
12月12日(月) 14:00
東京地裁103号法廷

書面提出期限
12月5日


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