大阪の「リバティおおさか」は、橋下徹氏が府知事時代にその展示内容を疑問視し、さらに現在は府から立ち退きを求められて裁判中であり、何かと話題に事欠かなかった。
一方、東京にも全く同じような施設があるのだが、こちらは不思議と話題になることがない。それが、台東区橋場1-1-6にある「東京都人権プラザ」である。
こちらが展示室。広さは「リバティおおさか」には及ばないが、展示の充実度は負けず劣らずである。
展示物を見る前にトイレを借りると、このような張り紙が。これもある意味展示物と言える。
高校生の人権メッセージ。個人情報クレーマーがうるさいご時世だが、さすがにペンネームでは説得力がないので、ちゃんと実名で掲載されている。
「犯罪被害者の人権」と「拉致問題」の展示。公的な施設で人権に関する展示が行われる場合、この2つは外せないテーマである。しかし、このテーマが採り上げられるようになったのは比較的最近のことだ。
実は官製の人権運動として最初に取り組まれたのが、1951年から始まり今でも続いている「社会を明るくする運動」で、これは犯罪を犯して服役を終えた人の社会復帰を支援するものだった。しかし、メディアの発達で凶悪犯罪の内容が生々しく社会に知れ渡り、厳罰化が求められるようになると、むしろ犯罪被害者の支援に重きが置かれるようになった。
人権というと、どうしても犯罪容疑者の待遇や、死刑廃止運動といったことが中心になり勝ちだったので、バランスをとるためにも「犯罪被害者の人権」は外せないのである。
「拉致問題」もナーバスな問題である。人権というと、どうしても「在日」のことが中心になり勝ちだったが、ご承知の通りこの拉致問題が起こって以来、特に北朝鮮系の在日に対する国民の目は厳しくなった。そのため、「拉致問題」を外すと、抗議されてしまうのである。
この2つは、率直に言えば申し訳のための展示と言ってよい。
そして、これがメインとも言える「同和問題」の展示である。やはりメインだけあって存在感が違う。
これは90年代に東京都が作成した同和問題の啓発ビデオ。
人権プラザには図書資料室があって、この種のビデオが充実していたのだが、実は移転のために残念ながら今は利用できない。同和関係の本も充実していた、全国部落調査によく似た、大阪や京都や高知の資料が開架に置かれていた。
「東京でおきている差別」というパネル展示。何とかして事例を探したかったのだろうが、逆にこの程度のものしかないのかという内容である。
皮革産業の歴史と、道具の展示。何が言いたいかというと、東京都でも皮革産業と言えば同和絡みだったということだろう。
そして、新しいテーマであり同和に次ぐ大きなテーマが「アイヌ」である。
ただ、同和とは違って「アイヌの人々はこんなに差別されていますよ」という展示ではない。北海道のアイヌ関係の博物館でもよく見られる展示内容で、北海道の観光案内のようなものである。
それでもあえて「人権」とからめて、この場で展示される背景には、政治的な背景とか、予算の取りやすさといった事情があるのだろう。
外国人の人権も大きなテーマだ。展示されているハングル文字の大きさから、どの外国人の人権がより重視されているかうかがい知ることができる。
昨今の話題について新聞の切り抜きや、ネットでのいじめについての展示もあった。
先述のとおり、東京都人権プラザは近く移転予定であり、移転先は港区芝2-5-6 芝256スクエアビル1,2Fで、来年1月中に会館ということである。
ただし、現在の建物も「分館」として来年いっぱいは使われるとのことなので、その間は今の展示物は見られるだろう。