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Channel: 宮部 龍彦 - 示現舎
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虎姫のニコイチ群が消滅へ

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その見た目のインパクトから、滋賀の部落の中でも圧倒的な知名度を誇った虎姫とらひめの改良住宅群がいよいよ消滅に向かう見込みである。今年度で全てのニコイチの持ち家化が完了する。

そもそも、虎姫の改良住宅群は旧虎姫町(現在の長浜市桜町さくらちょう)の同和対策で建設されたものである。かつて「小桜こざくら」と呼ばれた桜町はもともと住宅密集地であり、何度か大火に見舞われている。そのため、昭和50年代に密集地域を改良する事業が行われた。密集した住宅地を町が買い上げて、代替の改良住宅を住民に提供したのである。

同和対策事業の対象はあくまで現在の桜町の区域であったが、そこだけでは改良住宅を作る用地が足りず、桜町と隣接するにも改良住宅を建てられた。しかし、それでも足りず西大井町にしおおいちょう新旭町しんあさひちょう長田町ながたちょうかきにも改良住宅が作られた。

しかし、現地の地図を見て頂ければ分かる通り、改良住宅群はあまりにも巨大で、いくら桜町が密集地だったとは言っても、もともとこれだけの戸数が桜町にあったとは考えにくい。

そこで、地元住民や行政関係者から言われるのは、改良住宅が建設された時に、親戚の名義を使って1人でいくつもの改良住宅を借りた人がいたということである。そのため、区画整理のために立ち退いた人が入るための改良住宅が足りず、同和地区外に次々と改良住宅が建設されることになった。

2011年1月に新旭町の市営住宅で起こったガス爆発事故をきっかけに、市営住宅や改良住宅の又貸しが明るみになった。改良住宅の6割、市営住宅の4割で不正使用の疑いがあるとされ、まさに村ぐるみで不正が行われていたのではないかという疑惑が生まれた。しかし、これについて、ある住民はこう説明した。

「森さん(ガス爆発事故があった市営住宅を派遣会社社員に又貸ししていた、町の助役は“みんなやっている”みたいなことを言ってたけど、それは違うで。やっとったのは解放同盟と、町議会議員で20人くらいや」

不正をしたのは一部であって、ほとんどの住民は町の言われるとおりに立ち退いて、代替として改良住宅を借りた。つまり、「みんなやっている」というのは「解放同盟がみんなやっている」という意味なのだそうだ。

改良住宅は本来は桜町の元住民のための代替住宅なのだが、6親等までの親族には譲渡できるという決まりがあるため、それを悪用して親戚名義でいくつも住宅を借り、町に対しては月に3~5千円の家賃で済む住宅を、数万円で又貸ししていたのだ。改良住宅だけではなく、町営住宅も町議会議員のコネがあれば、同様の方法でいくつも借りることができたという。そして、解放同盟員や町議会員に見返りとして金銭が支払われた。

本来改良住宅には元桜町の住民が住んでいるはずなのだが、実際はよそから来た人も多いという。住民はこう証言する。

「例えば公明党のポスターがある家なんか、よそから来た学会員の家。古くからの住民は地元の寺の檀家だから」

しかし、ガス爆発以降は、又貸しはできなくなった。とばっちりを受けたのは、実態を知らずに住んでいた人だ。

「又貸しされた住宅に住んでいた婆さんとか、不正をしていない人を追い出している。もともと高い家賃を払わされていたし、あの人らが一番の被害者」

そう住民は憤る。ちなみに、住民によれば改良住宅の家賃の請求書が来るようになったのは長浜市になってからで、少なくとも合併前はほとんど家賃が払われていなかったのではないかということだ。また、改良住宅の払い下げは、建設された当初から想定されていたことで、そのために住民が積み立てた金もあったのだが、その金が行方不明になってしまったという。

長浜市によれば、改良住宅の払い下げはほとんど終わっており、あとは桜町の一部を残すのみで、今年度で全ての改良住宅が払い下げられるという。、住宅の払い下げ金額は200万円程度。田舎とはいえ、かなり格安だ。払い下げたあと、10年間は転売や貸与は出来ないことになっているが、その後どうするかは自由だ。

それを見越してか、住民によれば既に住宅を次々と「買い上げている」人がいると言う。ほとぼりが冷めた頃に、また転売するか貸与(この場合、もはや“又貸し”には当たらない)するつもりなのだろうということだ。

「正直者がバカを見る」そのような結果になってしまっていることは否めないが、ともかく同和事業の負の遺産を精算するためには、こうするしかなかったのだろう。

町営住宅も空き家が目立つ。

町営住宅も空き家が目立つ。

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長田と柿ノ木の間にある、「やな漁」の施設。これをめぐる利権が原因で地区内で対立が起きたこともあったという。

長田と柿ノ木の間にある、「やな漁」の施設。これをめぐる利権が原因で地区内で対立が起きたこともあったという。


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