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Channel: 宮部 龍彦 - 示現舎
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全国人権同和行政促進協議会が亀井文夫監督作品 「人間みな兄弟」のレビュー記事に削除要請をしていた

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全国の様々な自治体が、現在でも事実上インターネット上などで公開された状態にある「全国部落調査」に対して、解放同盟からの要請により削除を試みていることは解放新聞等が報じているところである。示現舎では、そのような自治体が法務省に提出した要請文を入手した。

要請を出したのは、東京都、府中市、日野市、国立市、鳥取県、香川県、福岡県、大阪府、大阪府市長会、大阪府町村長会、そして全国人権同和行政促進協議会(全人同協)である。内容を見ると、提出者は自治体の首長だったり、総務部長だったり、教育委員会だったり様々で、内容も多様である。しかし、いずれにしても意外に少なく、特定の自治体に偏っている。

法務省要請文書.pdf

こちらがその要請文書である。

特に目立つのは東京都と、多摩地域の自治体だ。これは解放同盟東京都連によるものと思われ、同和地区指定をしなかった東京都の自治体にも解放同盟が厳然と影響力を持っていることがうかがえる。

香川、福岡、大阪は「いかにも」という感じである。

特に執拗に要請書を出しているのは、鳥取県と全人同協だ。鳥取県については、グーグルの部落マップの件で、以前から確執があるので、不思議なことではない。

全人同協は、同和行政を行う県や政令指定都市で組織された全日本同和対策協議会が前身となっている。国の同和事業が終わった後も存続しているが、京都市のように脱退する自治体もあった。同和行政の手の内がおおっぴらになってしまうのは彼らにとって死活問題なので、全国部落調査を執拗に削除要請するのはある意味理解できるが、不可解なのは以下の削除依頼だ。

これは、本誌による亀井文夫監督のドキュメンタリー映画「人間みな兄弟 部落差別の記録」のレビュー記事に対するものである。その理由は、「和歌山県をはじめ近畿府県の特定の地名や街並みを撮影した映像を同和地区として掲示することは、掲示した地域の出身者、住民等に対して不当な差別的取扱いを助長し、又は誘発するものと認められるため」だという。

全人同協の事務局は各自治体が持ち回りでやっているのだが、奇しくも現時点では和歌山県企画部人権政策課が事務局となっている。早速「全人同協の事務局」に問い合わせてみた。

削除要請をするということは、「人間みな兄弟」自体が部落差別を誘発する作品と認識しているのか問うと、「部落差別を扱った社会作品とは認識している」ということで、作品自体を問題としているわけではないという。

ただ「学術目的であっても、被差別部落の映像や地名の扱いについては配慮を要する」というので、具体的にどのような配慮をすればよいのか、問うと「個別具体的なことは答えられない」というのみである。一般論として、インターネットであれば興味本位で見る人がいるのではないかということである。それでは、「インターネットでなければよいのか」というと「そのような問題ではない」という。

この作品を販売している日本ドキュメントフィルムには同じ措置を取ったのかというと、それはしておらず、この件について削除要請をしたのは示現舎だけだという。「ウェブサイトで作品を紹介するのはだめで、ウェブサイトで作品を売るのはよいのか?」というと、この質問に対してもはっきりとした答えはなかった。

とどのつまり、全人同協を構成する自治体の職員が物事を深く考えているとは到底思えず、地元の解放同盟等や関係議員から要請されたのを、右から左へ流したといったところではないだろうか。とにかく、亀井文夫監督作品「人間みな兄弟 部落差別の記録」も、今となっては誰かにとって都合の悪い作品なのだろう。


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