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Channel: 宮部 龍彦 - 示現舎
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あなたの会社が同和に狙われる第2回 同企連の会費と講演料

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未だに切れない同和と企業の関係。なにが「えせ同和」か、そうでないのか、切り分けることは不可能だ。関係者の証言と独自入手したデータから、4回にわたって検証する。

前回
第1回 部落地名総鑑事件から始まった

同企連の会費はタブーなのか?

同企連の会員の多くは、部落解放同盟に糾弾された企業であるのに対して、企業同推協は一定以上の規模の企業に対して行政から加入が呼びかけられたので、当然後者の方が圧倒的に会員数が多い。また、企業同推協は官主導で設立された経緯があるためか、同企連よりはいくぶんかオープンである。企業同推協の入会方法や年会費は聞けば教えてもらえる。また、その額も中小企業では数千円程度と、「良心的」な額と言える。

しかし、同企連の会費となると不透明なことが多い。

元祖同企連である大阪同企連の場合は、会費の基準を隠しておらず、企業の従業員数によって違うが1社あたり20万円前後である。

しかし、トヨタ自動車、アイシン精機、デンソーなど、トヨタグループの名だたる企業が加入する愛知人企連はどうか? 公表はされていないが、後で述べる通り筆者の調査では大阪同企連と大差ないことが分かっている。

最も気になるのは東京人企連だ。こちらはソニー、電通、ソフトバンク、東芝など首都圏に本社を置く名だたる企業が名を連ねている。会費はどうなのだろうか。しかし、東京人企連は異常にガードが固く、直接聞いても年会費を教えてもらえなかった。

そこで、1つのアイデアが筆者に提案された。東京人企連会員企業の株を買って、株主総会で質問したらどうだろうというのだ。株主であれば、その企業の予算について質問するのは全く正当なことであるはずだ。

2012年に「在日特権を許さない市民の会」(在特会)メンバーがロート製薬に押しかけて、韓国人タレントをCMに起用した経緯について問い詰めて強要罪で逮捕されたことがあったが、そんな事をしなくても株主総会で質問すればよかったのである。

もっとも、新手の総会屋と疑われそうな気もするが、別に利益供与を求めるわけでもなく、単に質問に答えてもらいたいだけなので、何の問題もない。

さて、筆者が目をつけたのは、大手ゼネコンの「大林組」である。大林組は東京人企連に加入しており、2011年には子会社の新星和しんせいわ不動産(後に大林新星和不動産と改名)が大阪同企連に加入している。大林組の名前は部落地名総鑑購入企業の名簿には見当たらないが、それゆえに同企連に加入した経緯も興味深い。また、建設業界は東日本大震災の復興特需の真っ最中であり、純粋に投資先としても悪くない。

早速筆者は大林組の株を買った。さらに念のため過去の株主総会議事録を見せてもらい、株主総会でどのような質問がされるものなのか確認した。

株主からの質問で多いのは、当然ながら様々な事業における収益についての質問である。例えば東京スカイツリー建設の採算性はどうか、ドバイでの事業で損失を出したがどういうことなのか、といった具合だ。ただ、政治がらみの質問もないわけではなく、過去に政治献金の額を開示して欲しいという質問に対して、大林組が自民党に献金した額を具体的に回答している。ということは、同企連の会費くらい答えてもらえてもよさそうなものだ。

2013年6月27日の第109回定時株主総会に向けて大林組に「事前質問状」を送付した。質問内容は次の通りである。

1・ 2011年に子会社となった新星和不動産株式会社が、それと同時期に大阪同和・人権問題企業連絡会に加入していますが、その理由と加入にあたっての社内決裁の経過、昨年度の会の年会費および研修費用などの関連する支出の内訳、人員の延べ動員数、活動内容をご説明ください。

2・ 大林組本体は東京人権啓発企業連絡会に加入していますが、そもそもの加入した経緯、昨年度の会の年会費および研修費用などの関連する支出の内訳、人員の延べ動員数、活動内容をご説明ください。

3・ 2005年4月22日に御社の戸塚とつか武彦たけひこ氏が東京人権啓発企業連絡会第26回定期総会で、「現在、各党において議論の行われている人権擁護法案としての人権侵害救済制度の法制化に向けた動きには、特に注目し、企業の立場から制定に向けた取り組みを継続して参ります」と発言したと東京人権啓発企業連絡会のホームページに掲載されておりますが、大林組は今現在でも会社として人権擁護法案あるいは人権救済法案を推進しているのでしょうか。

4・ 御社が東京人権啓発企業連絡会に加入していることは、経営上どのようなメリットがあるのか、その費用対効果について貸借対照表あるいは損益計算書のどの部分に反映されるのか説明ください。

1つ目は、筆者がおおよそ分かっている大阪での状況について正確に答えてもらえるか確認するための質問。2つ目は筆者が一番知りたい事柄。3つ目は政治的にナーバスな問題である「人権擁護法案」について、どう反応するか見るため。4つめは、これもまた筆者が一番知りたい事柄である。

さて株主総会当日、質疑応答の時間になると、原田はらだ昇三しょうぞう副社長が真っ先に筆者の質問に答えた。当日の回答を議事録から引用すると次の通りである。

1について―

当社は、かねてより人権を尊重し差別の根絶に取り組むことは企業の社会的責任であると認識し、グループをあげて取り組んでいる。また、大阪同和・人権問題企業連絡会(以下、「大阪同企連」)は、人権尊重の企業づくりに取り組むとともに、企業の立場から人権が確立した社会の実現を目指して活動している団体であると認識している。

したがって、新星和不動産は平成23年6月に当社の子会社となったが、同社においても当社グループの一員として人権問題に真摯に取り組むため、平成24年4月に大阪同企連に入会したものである。

また、大阪同企連の啓発講座や研修会に対し、昨年、新星和不動産から5名参加している。

会費については、具体的な金額は回答を差し控えるが、大阪同企連への入会が人権問題に取り組んでいくために有益であることから、適正な額であると認識している。

2について―

東京人権啓発企業連絡会(以下、「東京人企連」)は会員各社が社内の研修・啓発に取り組み、人権意識を高め、差別のない企業づくりを通じて、人権尊重を企業文化として定着させることを目指し、研鑽することを目的として活動していると認識している。当社はそうした活動が当社における人権啓発活動にも有効であると判断して、昭和57年12月に東京人企連に入会した。

会費については、大阪同企連と同様に適正であると認識しているが、具体的な支出額は回答を差し控える。

3について―

当社は、人権を尊重して差別の根絶に取り組む企業として、人権が擁護される住み良い社会が構築されることについては大いに歓迎する。しかし、そのための方法論や法制化される場合の法案の内容については、当社はコメントする立場にないため、回答を差し控える。

4について―

当社は企業の社会的責任、CSRを果たしていくことを経営の根幹に据え、その重要な基盤の一つとして、人権の尊重を位置づけている。活動に伴う費用については、一般管理費として会社の損益の中に含まれているが、その効果は損益計算書や貸借対照表に直接的に数値として表れるものではなく、当社の社会的信用につながり、ひいては業績に貢献していると認識している。

実際に株主総会でも口頭でこのように答えた。結局一番重要な会費については回答を得られなかった。分かったのは大林組が同企連に入会したのは昭和57年12月であり、同企連の結成から4年後とやや後発であるということだ。そして、人権擁護法案・人権救済法案については自民党内でも物議をかもした事柄であるから、実質的にノーコメントということなのだろう。

この質問の直後、別の株主がこんな質問をした。

「大阪同企連及び東京人企連の会費の額について、原田副社長が回答を差し控えるとのことであったが、本件は事前に質問状を送付しており、会社法第314条に基づき説明義務があると考える。説明を拒否するということであれば、同法施行規則第1号から第4号のいずれに該当するのか説明して欲しい」

これに対し、白石しらいしとおる社長の回答が次の通りである。

「本質問は会議の目的事項と直接の関係がないため、説明を差し控えるものである」

これに対しては、会場がどよめいた。ここまであからさまに隠すという姿勢では、さすがに違和感を持たれたに違いない。政治献金の額でさえ公表しているというのに、同和が絡むとここまでガードが固いということは、やはり企業にとって同和は最高レベルのタブーということが改めて確認された瞬間だった。

愛知人企連会員企業の場合

かくして、正面から企業と同和の関係を問う試みは失敗したわけである。正面から聞いても教えてもらえないのであれば、答えは1つ、正面以外から情報を引き出すしかない。

ということで、筆者は企業の人権・同和関係の予算に関する、ごく最近の資料を入手した。とは言っても大林組のことではなく、愛知人企連に属する、とある大企業の内部資料である。そこから企業と同和の関係を読み解いてみようと思う。

資料によれば、愛知人企連の年会費が20万円前後である。この額は数千人から数万人の従業員を抱える愛知人企連会員企業にとっては微々たる額であろう。しかし、人企連に入った企業には、年会費以外にも様々な支出が付いて回るのである。

例えばほぼ毎週のように人企連の「情報交換会」のための予算が支出されている。金額は飲み代程度の額なので、実際に飲み会なのだろう。

また、年に1回「全国同企連集会」があり、出張旅費・参加費などに10万円程度が支出される。他にも「人権・同和問題企業啓発講座」や同和地区の視察を行うフィールドワークが年に何度かある。その額から、おそらく2人の従業員が同和担当として当てがわれていることがうかがえる。

また、同和に関わる支出は人企連によるものだけではない。会社は「社団法人部落解放・人権研究所」と三重県津市にある「反差別・人権研究所みえ」にも加入しており、これらの年会費が5~6万円かかる。部落解放・人権大学愛知講座にも従業員を参加させており、これにも同じくらいの金額がかかる。

そして、ある時は部落解放同盟大阪府連委員長であり近畿大学(なお、近畿大学は「第4の部落地名総鑑」の購入者名簿に載っている)教授でもある北口末広氏による、役員と部長級以上を対象とした人権講演会が行われ、1回の講演で約20万円+交通費が支払われている。この講演は、会員企業が各社持ち回りで受けることになっているようである。

さらに、こういった講演の際の講師の接待、部落解放同盟愛知県連合会との交流会といった行事にも、1回数千円から数万円が費やされる。企業関係者によれば、他にも様々なところで同和への支出があるはずだという。

「本社の秘書室には、解放同盟の関連団体から購入させられた解放新聞・部落解放・ヒューマンライツといった書籍が社員の目に触れないようにひっそりと保管されている場所があると聞きます。こんな物は誰も読まないし、かと言って捨ててしまうのも怖いので、そうしているのでしょう」

こうして同和関係の支出は少なくとも年間で数百万円はあると考えられる。また、これらの活動は社員が勤務時間を割いて行うので、もちろんその分の給料も会社持ちだ。その結果、社員はさぞ人権意識が高いのかというと、実情はこのようなものだそうだ。

「20年くらい前のことですが、従業員の通勤経路について注意喚起するために「生活道路として地域の住民に配慮して通行を自粛すべき経路」を地図に示した資料が回されたことがありました。それは見る人が見れば、どう考えても同和地区のことなのですが、特に問題にならなかったですね」

なるほど、同和を避けるにあたって、解放同盟に突っ込まれない絶妙な言い回しである。この言い回しを開発するには、確かに高い人権意識が要求されるかも知れない。

ちなみに、この企業が愛知人企連に加入した理由は、過去に「差別事件」を起こしたからである。「実はウチの会社は昔部落差別事件を起こして糾弾されて、いろいろと無茶な要求を解放同盟からされた」と事情を知る従業員が語っていたという。


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