地方都市を車で巡っていると、ふと「くろんぼ」という店を見かけることがある。
ご承知の通り、日本においては「真っ黒になって働く」という比喩がある通り、黒いことは勤勉の証であり、美徳を表す言葉なのである。しかし、黒人の蔑称である英語の「ニガー」という言葉がしばしば「黒ん坊」と和訳されたためか、この言葉は弾圧された歴史がある。
しかし、無知と誤解と偏見に満ちた陰湿卑劣な弾圧にも関わらず、今でも地方には「くろんぼ」が生き続けている。そんな「くろんぼ」を探訪していこうというのが、このシリーズである。
さて、今回は弊舎編集部からもほど近い、神奈川県川崎市にある小田急読売ランド前駅へやってきた。
川崎市と言えば労働者の街というイメージが強いが、小田急線が走る北部の新百合ヶ丘、向ヶ丘遊園などセレブな住宅街である。
読売ランド前駅に降り立つと、共産党のビルが迎えてくれる。
そこからしばらく歩いたところに、「クロンボ」という理容店がある。
パンチパーマと厚い唇のイラストが、昭和的な雰囲気を醸し出している。
さて、なぜにクロンボなのか!?
実は、黒人とは全く関係なくて、先代の店主のあだ名が「クロンボ」だったためだという。
関係者は声をひそめてこう語る。
「でも、実は一度川崎市役所の人が来て、この屋号は問題があるのではないかと言われたことがありまして、由来を説明すると、それなら仕方ないなということになって、それきりです」
もしかすると、30年位前の話ですか? と問うと、
「そうです。昔ちびくろさんぼが黒人差別だって、問題になりましたね。それで、川崎市役所にも誰かからクレームがあったんでしょうね。市役所の人はえらい剣幕でした」
ということである。意外な過去…ではなくて、あまりにも予想通りの過去があったので、筆者は驚かされた。
しかし、今でもクロンボはここにある。この屋号をこれからも守って頂きたいと切に願う。