神奈川県最大の部落は、唯一の隣保館がある秦野市曽谷であるが、2番めの規模の部落はどこかというと、意外なことに厚木にある。
今回は厚木市下古沢にやってきた。
場所は厚木市の中心部から離れた所にあるので、アクセスするにはバスで行くか、車で行く必要がある。地区の中心には広場のようなところがあったので、ここに車を停めさせていただいた。
広場の近くに早速全日本同和会の支部を見つけた。工務店の事務所が支部を兼ねている。神奈川県で全日本同和会と言えば、同和団体というよりも土建業者の組合と評されるくらい、土木・建設関係の業者が多い。
地区内には建設関係の業者が多く、広い土地に建築資材や廃材が置かれている。
地区にある寺は本照寺で、これが大きな立派な寺である。その理由は、檀家が多いためで、周辺地域をはじめとして800戸くらいあるという。もちろん、檀家は部落に限らない。また、特徴的なのは西日本の部落に多い浄土真宗ではなく、日蓮宗であることだ。
日蓮宗は開祖である日蓮自身がインドの賤民である「旋陀羅」の子を自称していたと言われる。それゆえ、他の宗派に比べて日蓮宗は歴史的に賤民に対する別け隔てをしなかったと言われ、部落に対する「負い目」がない。そのため、浄土真宗等が解放同盟により「同宗連」を組織させられ過去の差別を責められ続けているのに比べて、日蓮宗は独自路線を進んでいる。
本照寺は室町時代の頃に建立され、当初は真言宗の寺であったが、当時の住職が日蓮宗の教えに感銘を受けたことから、日蓮宗に改宗して今に至っている。
下古沢地区の自治会の掲示板。掲示されているのは「本照寺だより」やイベントの案内で、同和だとか部落だとか人権だと言った掲示物はない。同じ形の掲示板が隣接する飯山地区にもあり、内容も似たり寄ったりだ。
下古沢と飯山は隣接しているため、外見では1つの集落のようになっている。
白山神社は飯山にあり、急坂を登った途中のところにある。
白山神社は簡素な神社だが、中に太鼓があり、地元住民により祭りも行われているようだ。飯山ではなく、白山という別の自治会によって管理されていることが伺える。
白山神社から部落の一部を見下ろすことができる。
地区内には新しい家と古い家が混在している。政治団体のポスターはその地域の特色を示すバロメーターだ。解放同盟が強い地域では、やはり民進党(旧民主党)のポスターが多いが、下古沢・飯山では自民党あるいは自民党系の政治家のポスターしか見受けられなかった。
全体的には典型的な神奈川の農村という佇まいなのだが、路地の面影を遺す風景もところどころに見ることができる。
筆者が個人的に気に入ったのが、この子供の遊び場である。この門といい、奥にある土壁の倉といい、田舎育ちの筆者としてはノスタルジアを感じる。また、一見何ともないように見えるが、周囲と隔ててありながら、死角がないところが、非常に子供の安全に配慮した工夫がされている。
余談だが、日本の部落は外国人にも興味を持たれている。実は筆者自身、欧州から来訪を受け、関東の部落を紹介したことがあった。2020年東京オリンピックに向け、部落を日本の観光地として売り出すべきであろう。