7月5日、東京地方裁判所103号法廷で、全国部落調査事件の最初の口頭弁論が行われた。裁判所内は撮影、録音禁止なので、写真等は掲載できないのだが、法廷の様子を臨場感を持ってお伝えしようと思う。
当日は、裁判所の周囲にはテレビ局の中継車が何台が停まり、正門前の駐車場の出入り口にはカメラマンが陣取っていた。とは言っても、それは全国部落調査の件とは関係ない。当日はいわゆる「弁護士局部切断事件」の判決公判があったからだ。圧倒的に世間の関心の大きさとニュースバリューは局部切断事件だろう。
しかし、全国部落調査事件も傍聴人の数では負けていなかった。解放同盟から動員がかかっていたこともあり、約50席の一般傍聴席の傍聴券を求めて約200人が列をつくった。
開廷が近づいたので、筆者は一般来庁者の入り口から荷物チェックを受けて金属探知機をくぐった。裁判所の職員に案内されて被告席に着くと、傍聴席は満席、原告席にも解放同盟側の数十名が陣取っていた。また、裁判所の係員が多数傍聴席の前で警戒していた。
傍聴席も原告席も、やはり高齢者が多い。平穏ではあるのだが、あれが宮部かと指さしたり、じっと睨んでいる人がいるといった様子だ。
開廷前に、いくつか事務的な手続きがあり、裁判の書類の送達先の届けを書いて、さらに訴訟記録の一部の閲覧制限の決定書が渡された。この決定書は以前届いたのと同じものである。
さて、開廷した後、まず形式的に2つの事件になっているものを併合して1つの事件として審理することが決められた。そして、通常の裁判と同じように原告側の訴状の陳述と証拠の提出、被告側の答弁書の陳述の手続きが行われた。実際に書面を読み上げるわけではないので、これはあっさりしたものである。
しかし、これではあまりにも物足りないということなのか、解放同盟側は意見書の陳述を申し出て、片岡明幸副委員長と代理人の中井雅人弁護士がそれぞれ10分間意見書を読み上げた。
意見書とは言っても、人権作文か「糾弾要綱」のようなものである。
その後、次の裁判の日程が決められた。被告側の追加の書面の提出期限は8月5日で、裁判官からは訴状の内容に対する認否と反論を求められている。その後、それに対して原告側がさらなる反論の書面を提出することになり、特に裁判官からは、原告には「解放同盟関係人物一覧」に掲載されている人とそうでない人がいるので、その点を明らかにするように求められた。
次回期日は2016年9月26日11時 東京地方裁判所103号法廷である。
解放同盟側によれば、次回の傍聴者はおそらく半分くらいになるだろうとのこと。また、解放同盟側は午後の弁論を希望したものの、法廷の確保の都合上やむなく午前になった。そのため、次回は一般傍聴人も入りやすいと思われる。
さて、弁論が終わった後、筆者はすぐには外に出してもらえなかった。裁判所の係員は、まず原告と傍聴人を外に出した。この時、何やら大きな声で叫んでいる傍聴人がいた。
原告と傍聴人がすっかり出て行った後も、しばらく待つように言われた。そして、やっと出られると思ったら、5~6人の係員に囲まれて誘導されるという物々しさだった。
裁判所としては、万一何かあったら困るということなのだろう。こんなところからも、裁判所の「部落」に対する恐れを見ることになった。