3月16日に横浜地裁が全国部落調査等の出版禁止を維持することを決定しましたが、それに対して東京高裁に保全抗告をしました。そして、その第1回目の審尋が5月26日に行われました。
示現舎側の提出書面は次の通りです。
保全抗告状A-H29-3-27.pdf
保全抗告状B-H29-3-27.pdf
保全抗告理由書A-H29-4-10.pdf
保全抗告理由書B-H29-4-10.pdf
証拠説明書A-H29-4-10.pdf
証拠説明書B-H29-4-10.pdf
解放同盟側の提出書面は次のとおりです。
保全抗告申立書A-H29-3-30.pdf
保全抗告申立書B-H29-3-30.pdf
保全抗告理由書A-H29-5-12.pdf
保全抗告理由書B-H29-5-26.pdf
「A」は全国部落調査の書籍の出版禁止に関する仮処分で、「B」はウェブサイト等の削除を命じた仮処分です。それぞれ東京地裁の別の部に係属しており、「A」が民事第9部、「B」が民事第15部です。偶然なのか、手間を減らすためなのかは分かりませんが、同じ日に審尋が行われました。ただ、民事第9部は解放同盟側に対して民事第15部の保全抗告の進行状況が分かる書面の提出を求めたので、今後も日程を合わせて進むものと思われます。
双方とも抗告しており、示現舎側の目的は当然、書籍もウェブサイトも全国部落調査を公開できる状態にすることです。一方、解放同盟は法人としての解放同盟に対する「業務妨害」を認めることと、「同和地区Wiki」のミラーサイトに対しても削除命令を裁判所が発することを目的としています。
先に審尋が行われた民事第15部の担当は清水響裁判官です。清水裁判官は、さらに双方が反論を提出することと、解放同盟に対してはミラーサイトについてさらなる説明の補充を求めました。裁判官が言うには、ミラーサイトについては誰が運営しているのか分からないのではないかということです。そして、現時点(保全抗告が行われている時点)で新旧のサイトがどのような状況になっているのかが問題となるので説明して欲しいということでした。また、なぜ地名が人格と結びつくのかについても説明を求めました。
民事第9部については「受命裁判官」として石井浩裁判官が出てきましたので、実際の担当は別の人になるということだと思います。こちらは書面の内容よりは、民事第15部の審理の動向について気にしていました。裁判官というのは、それぞれ独立して判断することが建前ですが、現実的には効率よく手続きをすすめるために、他の裁判の動向も気にするということだと思います。
民事第15部の次回の審尋は7月11日に設定されました。民事第9部は未定ですが、おそらく同じ日になるのではないかと思います。
通例では、高裁の手続きは1回の審尋だけで終わることが多いのですが、2回めの審尋を行うということは、地裁による決定の内容を変えようとしているということだと思います。
ところで、解放同盟側の主張に次の記述があります。
同和対策事業というのは、そもそも事業主体である自治体だけでできることではなく、多くの私的団体がそれと協働することをもって、初めてその目的が達せられるのであって、同和対策事業において、自治体と部落解放運動に関する諸団体は、それぞれのポジションでやっていかなければならない車の両輪のような関係にある。
正直、これについては、今さらそれを言うかと思いました。過去の歴史を見れば、行政闘争によって解放同盟が行政側を一方的に責め立てる関係です。また、大阪の同和奨学金の問題についても、責任を問われているのは行政で、解放同盟が何かしら責任を負ったという話は聞きません。本当に車の両輪だと思うのであれば、責任も共有すべきだと思うのですけどね。