「部落地名総鑑の原典は全国部落調査」。先日、横浜地裁が全国部落調査の復刻を差し止めたニュースと共に、この事実が全国を駆け巡った。
部落地名総鑑が全国部落調査を元に作られたということは、おそらく部落地名総鑑事件に関する最大のタブーであり、これは部落解放同盟内部でさえ半ばタブーであったようである。以前、解放同盟系の講演会で、講師が「部落地名総鑑の元になったのは何か、これは分かっているのですが、どうしてもこの場で言うことはできません」といった趣旨のことを話していたことが記憶に残っている。
それが解放新聞のみならず、全国紙にまで掲載され、一般人の知るところとなったのだから、大きな変化である。部落地名総鑑の原典は全国部落調査であるという事実を一般紙が書くことは以前ならはばかられたであろうが、横浜地裁の仮処分の直後、解放同盟側が東京地裁の司法記者クラブで大々的に会見を開いたので、一般紙もためらう必要はなかったのであろう。
今、起こりつつあるのは「タブーの価格破壊」だ。特に部落地名総鑑事件以後、全国部落調査は事情を知る所有者には慎重な扱いをされてきたのだろうが、もはや意味はなくなった。この本が持っていたであろう重厚なオーラは既に剥ぎ取られた。
ところで、ご存知の通り全国部落調査は今から80年前、2・26事件があった1936年に作られた書。事情の知らない人は「部落地名一覧を出版するのはけしからん!」と脊椎反射的に思うようだが、そのような方々にぜひとも知っていただきたいのは、部落の地名一覧が掲載された出版物は、何も全国部落調査だけではないことだ。
例えば、最も新しいのは大阪市人権協会(大阪市の同和事業の窓口団体で、実質的には解放同盟の関係団体である)が2003年に出版した「50年のあゆみ」である。この本には大阪市内のそれぞれの同和地区の区域が地番までかかれており、まさに大阪市版部落地名総鑑あるし、全国部落調査よりもずっと正確で詳細だ。この本は例えば大阪市立中央図書館では開架に置かれており、当たり前のように借りてコピーすることもできた。
それがネットで明るみになった時に、「部落解放運動のためだからいいんだ!」と最後まで言い張るのかと思えば、現在この本は大阪府内の図書館では利用制限がかけられている。つまり、皮肉にも行政からは要注意図書との扱いを受けている。
これに限らず、有志がまとめた同和地区Wikiの文献のページには、大阪府、和歌山県、高知県、長野県、群馬県等の部落一覧が掲載された文献がまとめられている。いずれも古書店などで手に入ったり、図書館などで閲覧、コピーできるような資料だ。
鳥取県東部の「穢多村」の場所が記載された「因幡誌」に至っては、国立国会図書館がインターネットで公開している。
もちろん、これはごく一部であって、図書館の資料をくまなく探せば、部落一覧が掲載された出版物はもっと出てくるだろう。それをわざわざ探して見つけては、制限図書にするのは現実的ではない。また、さきほどの因幡誌などは、江戸時代に書かれた純粋な歴史資料で、これを制限図書にするのはあまりに馬鹿馬鹿しいことだろう(もっとも、解放同盟に配慮して江戸時代の地図や過去帳を秘密扱いにするという馬鹿馬鹿しいことが現実に行われているが)。
それなのに、全国部落調査にここまで激烈に反応するのはなぜか、ということが問題なのである。その答えは、「部落地名総鑑の元ネタは全国部落調査」だからだろう。
解放同盟は、なぜ全国部落調査がだめなのかというと「部落差別がある現状で」というような趣旨の条件をつけているが、これも矛盾している。
差別がなくなれば部落の場所を公開してもいいという理屈なら、将来的には公開されるものという前提となるはずだが、解放同盟は永久に発禁にする勢いで「糾弾闘争」をしている(要は「差別をなくす気はありません」ということかも知れないが)。また、部落解放同盟や関連団体が過去に部落地名を掲載した本を出版していたのに今になって同じような本を糾弾するというのは、完全に順序が逆だ。
部落地名総鑑については、以下の動画で解説しているので、ぜひ最後までお聞きいただきたい。
さて、おそらく読者が気になっている思われる、冒頭の写真の本は、「フリマアプリ界の西成」と名高い「メルカリ」で発売中である。メルカリでは売り手と買い手が互いに個人情報を知らせずに取引でき、弊舎と小林健治・解放同盟のイザコザに巻き込まれる心配はないので、安心してご購入頂きたい。
メルカリで出品停止にされたので、ぐるぐるオークションのフリマモードで販売します。
転売用の10冊セットもあります。売り切れ次第終了です。