Quantcast
Channel: 宮部 龍彦 - 示現舎
Viewing all articles
Browse latest Browse all 672

「月とスッポン」は差別用語鳥取県大山町議会

$
0
0

6月21日、鳥取県の大山町だいせんちょう圓岡まるおか伸夫のぶお町議会議員が懲罰を受けた。懲罰と言ってもその内容は用意された陳謝文を読み上げさせるだけのものである。懲罰の理由は、議会で無礼な言葉を使用したということだ。

そして、その無礼な言葉というのが「月とスッポン」である。それだけではなく、議会では「月とスッポンは差別発言である」という珍説まで飛び出した。

※画像は陳謝文を読み上げる圓岡伸夫議員。

問題の議会の録画を、以下のUSTREAMのアドレスから見てみよう。

http://www.ustream.tv/recorded/88633021

動画の11:20頃から、岩井いわい美保子みほこ議員が「この圓岡発言は、私は差別発言だと捉えております」と述べている。また、28:00では西山にしやま富三郎とみさぶろう議員が「この発言は町内医療機関を馬鹿にした発言であります。人を馬鹿にすることは差別になるんです。差別発言であります」、大杖おおつえ正彦まさひこ「町内の医療機関に対し、無礼であり差別発言と言わざるを得ない」とそれぞれ述べている。

これだけでは経緯が分からないので、もう少し詳しく説明しよう。

大山町と言えば、中国地方最高峰の大山を抱える町なのだが、鳥取県内の他の町と同様に過疎と高齢化に悩まされている。また、町内の医療機関も心もとなく、その設備は自動車で30分から1時間程度のところにある米子市のものと比べれば、まさに「月とスッポン」なわけである。実際、大山町内では肺がんの検査をすることができない。また、町営の大山診療所では緑内障予防のための眼圧検査をすることができない。

しかし、今まで米子市などの町外の医療機関でも町の助成金により1人1万円でできた町民の人間ドックについて、助成の対象を町内の医療機関に限定することについて圓岡議員は異論を唱えた。その、本年3月議会での発言が次のとおりである。

6月から大山診療所で週に1回、人間ドックを主とした健診が始まりますが、これが本当に町民のためになるのでしょうか。腫瘍マーカーこそ今後検討すると言われましたが、婦人科検診はこれまで通り個別検診ですし、結果は後日郵送です。答弁の中で人間ドックはどこで受けても一緒だと言われました。私も過去に一度だけ町内で受けたことがありますが、米子の医療機関とでは月とスッポンです。個人負担の1万円は評価しますが、町内の医療機関での人間ドック受診者数に制限を設けてまで大山診療所で人間ドックをする意味が分かりません。もし、大山診療所で人間ドックを受診した人が、緑内障を発症し、それが原因で失明をされたら誰が責任を取るのでしょうか。いますべきは、これまでの米子の医療機関も含め、今後どういう体制で健診をすれば町民の福祉の向上につながるのかを考えるべきだと思います

分かりにくいのがこの後の経過である。この時、他の議員からの抗議などにより「月とスッポン」等の発言は撤回されて議事録からも削除された。しかし、今年の6月議会で再び蒸し返されて、圓岡議員が3月議会での議事録削除に納得していない旨の発言をしたため、その事を採り上げて実質的には3月議会での発言が6月議会で懲罰動議の対象となってしまったわけである。その後開かれた懲罰委員会では懲罰の必要なしとの結論が一度は出たものの、本会議では8対6で懲罰動議が可決された。

発言の中で出てきた大山診療所は、毎年多額の赤字を出しているという。こういった背景を見ると、町営の診療所の存続を求める多くの議員と、それよりも町内外に関わらず診療の質を求める圓岡議員の間で対立があり、政争の道具として懲罰動議が使われたように見える。

それにしても、なぜ「月とスッポンは差別発言」といった言説が出てきたのか。事情通によれば、キーとなる人物は西山議員であるという。そこで、西山議員に、なぜ月とスッポンは差別発言なのか聞いてみた。

「誰が誰を差別したということになるのでしょうか?」

筆者の質問に対する、西山議員の答えが次の通りである。

「圓岡君が、町民全体ですよ私に言わせれば」

「私は部落解放運動をしてきておりますし、鳥取県の同和教育研究協議会の副会長でもありますし、部落差別をはじめ、あらゆる差別をなくし、国民が幸せに暮らせる町づくりということを標榜しておりますので」

「月とスッポンというのは比べ物にならないものだという差別表現だと辞書なんかには出てますのでね」

「月とスッポンという言葉自体が差別発言ですよ、差別用語と言っております私は」

ここから分かる通り、やはり「月とスッポンは差別発言」の裏には「同和」があったわけである。

一方の圓岡議員は、無所属・新人でなおかつ得票数最下位の議員ではあるが、これには背景がある。実は圓岡議員はもと共産党所属の議員であったのだが、票の分散を避けるために出馬しないようにとの党の方針に逆らって除籍された過去がある。現在は、言わば「一人共産党」のようになっているわけである。

議員での「差別発言」の懲罰を巡っては2014年の滋賀県甲賀市議会の事例昨年の福岡県那珂川町議会の事例があったが、いずれも解放同盟と共産党の対立が見え隠れしていた。

それにしても、「月とスッポンは差別発言」だから懲罰というのは、あまりに低レベルではないだろうか。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 672

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>